草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年6月12日
茨城の緑に包まれた一角に、静かにその扉を開くイタリアンがある。完全予約制、名は伏すが、その一皿一皿に漂う凛とした美意識は、訪れる者の記憶にそっと残るだろう。
撮影は一発組み。皿を並べ、構成を定め、料理の全容を一枚に描き出す。自然光には頼らない。すべてはストロボによる人工光。だからこそ、皿を動かす必要はない。光を移動させればよいのだ。光の角度をわずかに変えるだけで、料理の陰影や表情は見違えるほど変化する。
前菜の盛り合わせを軸に、サラダ、スープ、パスタ、肉料理へと続く構成は、無理のない流れの中に、確かな抑揚がある。
ロデジャーノチーズのサラダでは、チーズの削り出しが軽やかに立ち、葉の緑とともに涼やかな奥行きをつくる。アメーラトマトとブラータのカプレーゼは、濃密な赤と柔らかな白の対比が美しく、ストロボの光がその質感を立体的に浮かび上がらせた。
続く地元野菜のミネストローネは、具材の切り方や重なり方にも心が行き届いている。滋味に富みながら、どこか静謐な佇まいがある。
ローズポークとそら豆のアラビアータは、春らしさと力強さを併せ持ち、脂の照りと唐辛子の赤が光を捉えて立ち上がる。
そして終盤を飾るのが、常陸牛のタリアータ。繊細な火入れによる断面のグラデーション、余熱でとろける脂の艶やかさは、まさに光を引き寄せる皿だった。
料理とは、素材と技の響き合いであると同時に、空間の空気や人の気配までをも含んで存在している。今回の撮影では、そうした“料理の総体”を一枚に封じ込めることができた気がしている。
店長:平野慎一
料理撮影なら日本フードフォトグラファー協会正会員で間違いなし!
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