川口市のアルファリペアのブログ
2025年9月20日
1. 原状回復の基本概念
原状回復とは、
「借主が借りた当初の状態に戻すこと」
ではなく、
「通常の使用による損耗や経年劣化を除き、借主が故意・過失、または不適切な使用によって生じた損耗・破損を修繕すること」
を意味します。
ポイント
通常損耗・経年劣化は貸主負担
例:日焼けによる壁紙の変色、家具設置による床の凹みなど
借主の過失や故意による損耗は借主負担
例:タバコのヤニ汚れ、落書き、ペットによる破損など
2. 原状回復費用の主な対象項目
以下は一般的に費用負担が発生しやすい項目です。
項目 借主負担になりやすい例 貸主負担になりやすい例
壁紙(クロス) タバコのヤニ汚れ、落書き、穴あけ(大きいもの) 日焼け、軽微な画びょう跡
床(フローリング) 重い物を落としてできたへこみ、こぼした液体でのシミ 家具跡、通常の歩行による摩耗
畳・カーペット ペットの尿シミ、焦げ跡 日焼け、経年劣化
設備(キッチン、浴室等) 掃除不足でのカビ、油汚れ、破損 通常使用での水垢、パッキンの劣化
鍵交換 紛失、盗難、破損 入居者交代によるセキュリティ目的(貸主負担が多い)
3. 費用の計算方法
壁紙の例
壁紙は6年で価値が1円になるという国交省ガイドラインが目安です。
たとえば、入居3年で全面張り替え費用が6万円の場合:
6万円×6年−3年6年=3万円6万円 × \frac{6年-3年}{6年} = 3万円6万円×6年6年−3年=3万円
つまり借主負担は3万円になります。
4. よくあるトラブル
トラブル事例
全体張り替え請求
一部だけ汚した場合でも、貸主が「全体を張り替えるから全額負担して」と請求するケース
→ 借主は「汚れた部分のみ負担」が原則
通常損耗を借主負担にされる
家具跡や日焼けなど、本来貸主負担であるものを請求されるケース
ハウスクリーニング代の全額請求
契約書で特約がない限り、通常は貸主負担
5. 契約書確認の重要性
トラブルを避けるためには契約書の特約条項を必ず確認しましょう。
特約で有効な条件
借主に不利益であっても、明確かつ具体的に記載されていること
借主が自由意思で合意していること
例:
「退去時にハウスクリーニング代として2万円を負担する」
6. トラブル防止のポイント
入居時に写真撮影
傷や汚れの記録を残すことで、退去時の証明に
契約書・重要事項説明書を確認
特約があるかチェック
退去立会い時に必ず確認
修繕箇所と費用の内訳をその場で確認
納得できなければ消費生活センターへ相談
まとめ
通常使用による経年劣化は貸主負担
借主が負担するのは故意・過失による損耗のみ
ガイドラインを基準に費用を算定
契約書の特約条項に注意
トラブル時は証拠を残して相談機関へ
【賃貸の現状復帰費用が高額になりがちな理由】
1. 国土交通省のガイドラインと実務のギャップ
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常損耗や経年劣化は貸主負担とされています。
しかし、実際の現場ではガイドラインが「法的拘束力を持たない」ため、管理会社やオーナーがガイドライン以上の負担を借主に請求してくるケースがあります。
特に、古い物件ではオーナーがリフォーム費用を入居者負担にしようとする傾向が強く、トラブルになりやすいです。
2. 管理会社・オーナーの利益構造
原状回復工事は、多くの場合管理会社が工事業者を手配します。
このとき、工事費用に中間マージンが複数回上乗せされるため、実際の工事費より高額になります。
例:実際の工事費10万円 → 下請け→管理会社→オーナーと伝達され、最終的に15〜20万円請求されるケースも。
特に大手管理会社では、専属工事業者しか使えない仕組みにしていることが多く、相場より高い単価になりやすいです。
3. 一括リフォーム化による高額化
入居者が退去した後に次の入居者をスムーズに入れるため、オーナー側は「全面的なリフォーム」を選ぶことがあります。
その結果、借主が使用していた部屋の傷みに関わらず、
壁紙全張替え
床全面張替え
設備一式交換
といった大掛かりな工事が行われ、その一部または全額が借主負担として請求されるケースが見られます。
特に、壁紙は1面だけでも張替えができるのに全面張替えを理由に全額請求されることが多いです。
4. 請求項目が不明確
請求書に「修繕費一式」「原状回復工事費」とだけ記載され、内訳が明確でないことがあります。
これにより、実際に必要な修繕がどれくらいだったのか判断できず、借主が交渉しづらくなります。
内訳が不明確なまま支払ってしまうと、不要な費用まで負担してしまうリスクが高まります。
5. 入居時の確認不足
入居時に、傷や汚れの記録をきちんと残していないと、
元からあった傷や汚れまで借主の責任にされる
というケースがよくあります。
特に写真記録や入居時チェックリストがないと、証拠がないため言い分が通らなくなる可能性があります。
6. 特約条項による負担拡大
賃貸契約書には「特約条項」が記載されていることが多く、これが借主に不利な内容の場合があります。
例:壁紙は全面張替えを借主負担とする
例:ハウスクリーニング費は必ず借主負担
特約はガイドラインよりも優先される場合が多く、契約時にしっかり確認していないと後で高額請求につながります。
7. 専門知識の不足による泣き寝入り
借主側が法律やガイドラインの知識を十分に持っていないため、
「請求額が妥当かどうか判断できない」
「交渉の仕方がわからない」
「裁判や調停までは面倒でできない」
その結果、相場以上の高額請求でも支払ってしまうケースが少なくありません。
まとめ
賃貸の現状復帰費用が高額になりがちな主な理由は以下の通りです。
ガイドラインと実務のズレ
管理会社・オーナーの利益構造による中間マージン
全面リフォームでの過剰請求
請求項目が不明確で交渉しづらい
入居時記録不足による責任の押し付け
特約条項での借主負担拡大
借主側の知識不足による泣き寝入り
これらを防ぐためには、入居時の記録保管、契約書の確認、請求内訳の提示要求、ガイドラインの知識習得が重要です。
また、不当請求が疑われる場合は、消費生活センターや専門家への相談も有効です。
【ではどうすれば良いのか?】
賃貸の現状復帰費用を抑えるためには、入居前・入居中・退去時・請求後の4つの段階で、それぞれ適切な対策を取ることが重要です。以下では、具体的なポイントを段階ごとに詳しく説明します。
1. 入居前:契約時にできる対策
退去時に不利にならないためには、最初の契約時から準備が必要です。
① 契約書・特約条項を確認
ガイドラインを超える借主負担が記載されていないかチェック。
特に確認すべき項目
壁紙や床の全面張替えが借主負担とされていないか
ハウスクリーニング費用が過剰でないか
経年劣化分まで借主負担になっていないか
不明な点は、契約前に管理会社やオーナ
店長:井上善嗣
<関東>
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県