大阪市淀川区のJBPマジカルスターリースタジオ森月勝大のブログ
2025年11月28日
「撮影は、互いの準備でつくるもの」
依頼だけして放置する“こだわり依頼者”へ
(これは、ほんの少しだけ毒を含んだカメラマンの独白)
撮影というものは、当日の数十分だけで成立しているように見えて、実はそうではない。
見えているのは氷山の一角で、その下には、時間、経験、事前準備、そして撮る側の「読み」が折り重なるように存在している。
ところが──である。
世の中には、依頼だけしておきながら、その後を放置する人がいる。
返信は遅い。
事前準備の質問にも答えない。
なにやらこだわりがあるのは分かるのだが、それを出すのは「前日夜」や「当日の朝」。
そして極めつけは、他のカメラマンのサンプルを大量に送りつけてきて、
「この感じで撮ってほしいんです」
と平然と言う。
……なら、そのカメラマンに頼めばいいだろう。
それは、喫茶店に入っていきなり、
「この店、ラーメンないんですか?」
と言っているようなものだ。
その店がどんな味を持っているかも知らず、メニューを読まず、注文票だけ投げて帰る客とたいして変わらない。
■「前のカメラマンは、100枚以上くれました」
と言う人へ
そうですか。
では、そのカメラマンに頼めばいい。
スケジュールが空いていない?
連絡しても断られた?
……率直に言おう。
それは、あなたが“相性が悪かった”だけではないのか。
人は、口には出さないが、無理な要求をしてくる相手とは距離を取る。
カメラマンも同じだ。
写真は、人と人が向き合ってつくる作品だ。
単にシャッターを押すだけではない。
やり取りも含めて「作品の質」が決まる。
■そして、もっと厄介なのが
「限られた時間の中で、やりたいことが山ほどある」依頼者
人数は多い。
祖父母は指示を聞かない。
子どもたちはテンション自在。
移動だけでも大仕事だ。
そこへきて、ポジションは多数欲しい、アイテムも全部使いたい、
「〇〇ポーズも」「あのサンプルみたいに」「この構図も」
とてんこ盛り。
これは、100円玉握って寿司屋へ行き、
「銀座の名店と同じクオリティでお願いします」
と言っているようなものだ。
しかも、100円で足りると思っているのは本人だけ。
■お宮参り撮影では、私は必ずこう伝えている
「練習してきてください」と。
抱っこの角度、赤ちゃんの向き、手の添え方、きょうだいの立ち位置──
現場でゼロから作ると、その分撮影時間が減る。
なのに、練習してこない。
そして後日こう言う。
「何度もやり直しさせられました」
……原因をカメラマンに向けるな。
準備不足は、あなた側にある。
■七五三撮影でも同じことが起きる
私のサンプルの中には、凛とした子どもたちが写っている。
そこに至るまで、親子でどれだけ練習してきたか、どれだけ話を重ねてきたか。
その背景を知らず、ただ写真だけ見て、
「うちの子も、こういう感じに撮ってほしい」
と言う。
しかし当日、ずっとピース。
しかも練習ゼロ。
ピースが悪いとは思わない。
子どもが楽しければ、それが一番だ。
ただ──
他の家族の努力の結果だけを羨ましがるのは違う。
■そして、書いておかなければならない
遅刻常習の人は、総じてメールが遅い。
例外はほとんどない。
事前連絡が遅く、当日もギリギリ。
そして枠の終わり際に、
「少し延長できますか?」
……図々しいにも程がある。
新人カメラマンなら、前後の予定が空いていて対応できるだろう。
だが、人気カメラマンは無理だ。
そして、こういう人に限ってレビューに書く。
「臨機応変に対応していただきました」
臨機応変ではない。
ただ単に、前後が空いていただけである。
■この数年、言いたい放題の依頼者が増えている
SNSの匿名レビュー文化が原因なのか、
「客は神様」思想が抜けないのか。
なんでも言えば通ると思っている人が増えた。
だから、私は、そして私の仲間たちは、
1%の“問題依頼者”を共有している。
誤解しないでほしい。
晒すのではない。
復讐でもない。
ただ、
・不可能を詰め込み
・準備をせず
・現場を乱し
・後から文句だけは言う
そんな人を、二度と巻き込まないためだ。
カメラマンは、
「誰にでも無条件で尽くす職業」
ではない。
限られた時間で最良をつくるには、最低限の協力が必要なのだ。
■ただし──
私は、99%の依頼者を心から宝物だと思っている
本当にそうだ。
事前に丁寧に返信してくれる。
子どもと向き合い、練習してくれる。
当日は協力してくれる。
移動も手伝ってくれる。
そんな人たちのおかげで、私は今も撮影を続けていられる。
シャッターを押すたびに、「この仕事を続けてきてよかった」と思う。
今日ここに書いたのは、
その「1%」のための、ほんの少しの“毒”にすぎない。
だが、この毒は、業界で多くのカメラマンが喉まで出かかって飲み込んできた言葉でもある。
■結論
撮影とは、
当日の一瞬だけで完成するものではない。
依頼した瞬間から、
準備は始まっている。
こだわるなら、
なおさら準備せよ。
サンプルを送りつける前に、
そのカメラマンのスタイルと価値観を尊重せよ。
練習しないなら、
文句を言うな。
そして、
「安い金で銀座の寿司を求めるな。」
これらを踏まえたうえで、
どうか、最高の撮影体験を迎えてほしい。
そして──
これまで出会ってきた、99%のすばらしい依頼者の皆さまへ。
あなた方の存在が、私の写真を育て、私の仕事を支え、私の人生を豊かにしてくれました。
心から、深く、深く感謝しています。
元USJフォトグラファー森月勝大|家族の笑顔と想い出を最高の光と技術で残します
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