横浜市青葉区のなすのきものと着付け教室のブログ
2024年1月14日
SNSでつながった方から「きもののサスティナブル、アップリサイクル、文化についてご興味がある」とメッセージをくださいました。
地球温暖化が社会的に強く意識されるようになり、また、個人でも体感的に温暖化を感じるようになってきたので、そのような話がでてくるのかな?と思います。
そこで、言葉の意味を簡単に調べて見ました。「サスティナブル」とは、「持続可能な、維持できる」。「アップリサイクル」とは、不要なものに付加価値をつけて新たな商品に生まれ変わらせる。と言うことでした。文化についてはちょっと文章が長くなりそうですし、これとは、切り離して考えたいと思うので、今回はこの二つのみについて、特にきものにまつわる話しとして考えてみました。
着物は前提として「メンテナンスして着用する」衣類として作られていると感じることがあります。
なので、洋服のように着古したり、気に入らなくなったり、サイズが変わって着られなくなったりしたら「おしまい」という衣類では無いように思います。
着物は解いて接ぎ合わせると(ばらばらにすると)もとの反物の状態に戻すことができます。大きさはだいたい幅36センチから38センチ程度。長さは13メートル程度です。洋服のように丸く切る部分がないので、捨てる部分がなく、歩留まりが非常に良いです。
汚れたり、すり切れたりしたらその部分は切って捨てて、サイズダウンして人に譲る事もできますし、羽織にしたり、綿入れにしたりします。着付けると見えない部分がありますので、そこに別の布を足してもう一度着物として着る事もできますし、2枚の着物を半身にすることもできます。
布団の生地などのファブリックに使うこともありますし、バックや草履や鼻緒にすることもあります。捨てたりしません。
帯も、汚れてきたりすり切れてきたら解いて、汚れた部分を着用して分からない部分に持っていくこともできます。
写真のピンクの帯は頂き物ですが、解いて汚れた部分を着用するときに見えない部分に持っていきました。まだまだ充分着用可能です。
ブルーの型染めの帯は破れてしまった部分が大きかったので、解いてきれいな部分を鞄屋さんでカバンの生地にしてもらい、カバンを作りました。
残りは大事に取っておきます。次に他の帯を解いたときに足し布にするかもしれませんし、他の何かになるかもしれません。鼻緒にしようかな、と思っています。
例をあげれば切りが無いのですが、着物ははじめに仕立てる段階で捨てる部分が全く無いので、よっぽどすり切れてボロボロにならない限り捨てたりしません。生地が小さくなってきたら、小さくなった生地同士を接ぎ合わせてもう一度一反にすることだって可能です。
そして、非常に作業性がよい。狭い場所で作業できるようになっています。
解いたり、加工したりするときに幅が狭く、長いので、片側に丸巻きを置いて、作業が終わった部分は片側に畳んでいくことで、狭い場所で加工が可能です。これ意外にすごいことだと思います。やってみると分かります。
このようなことから、アップリサイクルも容易なんだと思います。
反物に戻した状態で販売しているお店もあります。もう一度染めの加工などをして販売する動きもあるようです。
いままでは、アップリサイクルは利用したことはありませんが、今では加工でできなくなった商品や、新品ではとても買えなかった、作家さんや国宝級の反物を手に入れる事ができます。悉皆にだして洗い張りをしてもらい、仕立て直せば気持ちよく着られると思います。
このようにとても良いものだと思うのですが、手間、お金そして、それらの知識が必要になります。
きものを持続的に着ていこうと思うと手間、お金、知識の中でも特に「知識」が必要です。
染めなどの加工の知識、生地の産地の知識、着付け方法、仕立てときもの特有のサイズについて等、さまざま知っていないと「持続可能」なものもそうではなくなりますし、アップリサイクルも自分の意向を伝えられなくて、思ったとおりにならなかったりします。
ただ、多分、きものに限らず、他の商品でも同じことじゃないかなと思います。
私たちは新しいものにどんどん買い換えていくことに「慣れ」過ぎてるきがします。
家も、車も、食材も同じです。結局すべて、知識を習得する忍耐力不足からきていると感じています。
これらの知識はどのように伝承されてきたのか。
きものに関しては、母親が着るのを手伝ったり、お人形遊びをすることで着付けの順番を覚えたり、譲り受けたりすることで悉皆の方法を学んだんだと思います。核家族化でこのような口伝もなくなりつつあるように感じます。
時間のかかる知識は習慣になり、当たり前の事として身についてきたけど、「知識」すらものの買い換えなみに時短で便利に手に入るようなってきました。そうゆうものは身につくとか習慣になるとは、また別のものじゃないかと感じます。
実際に出張着付けに行くと、きものを着るのに必要なものや名称、たたみ方が分からない。という現場によく遭遇します。
おばあちゃんやお母さんでもそれらのことが分からなくて、きものがぐちゃぐちゃになっていることもしばしば。
レンタルでは肌着から着物まで一式全てを借りることができる便利な世の中ですが、そのおかげで、消費者は何も学ばなくなりました。
大量消費、どれだけ沢山売れるのか。それが「成長」である以上、これらの弊害は仕方がないのかな、とも思います。
何も知らなくても便利で、安く、簡単に、早く、最終形態になれる。サスティナブル、アップリサイクルとは正反対、かな?
この辺は、文化に話しにつながっていくところでもあります。
最初に戻りますが、きものは持続可能になることが前提で作られた衣装だと思います。
ですので、私の教室ではただ単に「きれいに着付けしましょう」というだけでなく、きものというのはどんなものなのかと言うことも教室でお話しさせていただきます。そのうえで、きものを着ていただきたいし、そのようなことが分かれば、どのようなときに、どのようなものを着ていくのがよいのか悪いのかということも感覚的に分かってくると思うのです。
店長:那須朝美
太らない補正と、着ていて疲れない着付け
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