いわき市の総合サービス eプランのブログ
2026年5月4日
俺は旅するお掃除マン。
呼ばれれば日本全国どこへでも飛んでいき、掃除を通じて各地の人と出会い、ご当地グルメを楽しむ──それが生きがいだ。
そう、人よんでさすらいの掃除師。
ネット経由で仕事をもらうこの仕事。
事前にわかる情報なんて、住所と電話番号くらいのもんだ。
やり取りが多ければ、なんとなく人柄も見えてくる。
でも、メッセージのやり取りもなくスムーズに予約確定まで進んだお客様は完全に未知数。
正直、当日まではちょっとしたガチャだ。
そんなある日の依頼は「冷蔵庫クリーニング」。
しかも依頼主は女性。
珍しいな、と思った。
キッチンは主婦の城。冷蔵庫って、意外と“触らせない領域”だったりする。
で、当日行ってみたら理由はすぐ分かった。
依頼主は娘さん。対象は――高齢のお父さん。
なるほどね。これは一筋縄じゃいかないやつだ。
冷蔵庫を開けた瞬間、閉めて帰りたくなった。
中はもう、食材の暴動。
詰め込みとかいうレベルじゃない。密度が違う。
じーちゃんの寿命、軽く超えてる量ある。
「中身出すので、不要なもの教えてくださいね」
と娘さんに伝えた、その瞬間。
背後から、圧。
「捨てるものはない。終わったら全部戻してくれ。エスデージーズ!」
……エスデージーズ?
ああ、SDGsね。
発音クセ強めだけど、言いたいことは伝わる。
頑固確定。
でもちょっとお茶目でもある。
「エスデージーズ」
何度も何度も言ってくるあたり、どう考えても覚えたてだろ。
絶対気に入ってる。
もう完全に、
小さい子どもが覚えたての「ちんちん」とか「うんこ」とかを、嬉しそうに連発してるあの感じ。
それと一緒にしか見えない
とりあえず中身を全部クーラーボックスへ移動。
ようやく露出した庫内は――
醤油、謎の汁、何かの成れの果て。
床も壁も、しっかり歴史を刻んでる。
弁当の小袋調味料が無限に出てくるし、
鍋ごと冷蔵保存されてる謎の料理もある。
ひとつひとつ確認する。
「これは捨てます?」
「エスデージーズ!」
はいはい、捨てるなってことね。
…にしても。
後ろに立って監視してくるの、普通に邪魔なんだけど。
「後はやっておくんで、部屋で休んでて大丈夫ですよ」
と言ったら、一度は引いた。
――と思ったら。
椅子持って戻ってきて、俺の真後ろに着席。
監視、強化された。
そんな中、冷蔵庫の奥から“卵”が一個。
明らかに忘れ去られた個体。
年季が違う。
無言でじーちゃんにアイコンタクト。
すると。
俺の手から卵を奪取。
そのまま――
炊きたてご飯、用意。
まさかのTKG。
いや、勇者すぎるだろ。
(頼む、ひよこ出てくるなよ…)
と横目で見てたが、普通に食ってた。
どうやら、セーフらしい。
作業を続けていると、ある違和感に気づく。
ぐちゃぐちゃなはずなのに、
ところどころ“異様に整ってる”。
ラップご飯が全部同じサイズで整列してたり、
野菜がカットされてジップ袋にラベリングされてたり。
ちゃんとしてる。
むしろ几帳面寄り。
なのに、その上から全部ぶち壊してる。
なんだこのバランス。
そんな中、ついに“ラスボス”登場。
皿に乗った天ぷら。
ラップ付き。
そして――全面カビ。
これはさすがに勝った。
「おじーさん、これは…?」
少し悩んでからの一言。
「ノーエスデージーズ…」
よし、捨てろだな。
ここから流れが変わる。
ノーエスデージーズがちょいちょい出始める。
さっきまでの“絶対防衛ライン”が、揺らいできた。
ここが勝負どころ。
敬語、解除。
「いやこれもう無理だよ。食えないって。こういうの溜まるからさ」
少し踏み込む。
すると、じーちゃん。
「そうだね…任せたよ」
椅子を持って、部屋へ撤退。
――勝った。
完全に主導権、こっち。
そこからは早かった。
遠慮なしに仕分けて、捨てて、磨いて。
気づけば、見違えるほど綺麗な冷蔵庫が完成。
一番驚いてたのは娘さん。
冷蔵庫以上に、
あのじーちゃんが制圧されたことに。
でも作業してるうちに、なんとなく見えてきた気もする。
あの奥の方だけ妙に整ってた食材。
きっと、亡くなったばーちゃんがきちんと管理してた名残なんだろう。
だから、じーちゃんは全部を崩せずにいる。
でも一人じゃ管理しきれなくて、結果こうなる。
……なんて、ちょっといい話にまとめたくもなるが。
このブログ、ノンフィクションなんでね。
そこは勝手に美談にはしない。
いい現場だったな、と思いながら作業終了。
娘さんに挨拶して、帰ろうとしたその時。
じーちゃんがポチ袋を差し出してきた。
「これで昼でも食べて」
「いや、お代はいただいてるので…」
「いいからいいから」
押し切られて受け取る。
まあ、気持ちだしな――
と思って帰り道、開けたら。
今回の冷蔵庫クリーニング、
5回分くらいの金額入ってた。
いやいやいや。
どこがSDGsだよ。
完全に――
スーパーデラックスじーちゃんだろ。
エスデージーズ。
あの人の中ではきっと、
「捨てない」じゃなくて「使えるものは使うが、だからと言ってケチらない」だったんだろうな。
英語にはない日本語
「勿体無い」
じーちゃん長生きしてね。
店長:佐藤 和浩
「石屋」と「掃除屋」と「大工」3人の職人が集まって作った『まちの便利屋』各サービスに専門家在籍!安心しておまかせください
<東北>
宮城県
福島県
<関東>
茨城県
栃木県
埼玉県
千葉県
東京都