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横浜市泉区のなっちゃんのブログ

ネズミ被害とゴミの山…団地取り壊しで崩れた生活を取り戻すまで

2025年9月9日

第1章
横浜市旭区・二俣川。

朝8時。曇り空の下、平山はスタッフ3人と共に、現場となる一軒家の前に立っていた。
庭から道路まではみ出す枝葉、足の踏み場もないほどに積み重なったゴミ袋、そして玄関前には大きな家具が傾きかけていた。

「ここで…誰か住んでたのか?」と遠藤が呟く。

「いや、今も住んでるよ。依頼者の女性、高齢なんだ。昨日電話で話したけど、"もう限界です"って…」

平山はメモを見ながら玄関の呼び鈴を鳴らしたが、音はしない。
どうやら壊れているらしい。
代わりにドアをコンコンとノックすると、内側からか細い声が返ってきた。

「……どうぞ……鍵、開いてます……」


第二章:暗闇と悪臭の中で

扉を開けた瞬間、全員の顔が強ばった。

暗い。重たい空気。そして、腐敗した何かのような、獣のような臭い――それが一斉に襲いかかってきた。

「こりゃ……ネズミの糞だな」と、西尾がマスク越しに呟いた。

床一面にゴミ、足の踏み場もなく、壁の隅には小さな黒い粒がびっしりと詰まっていた。
まるでこの家が、長い間「人間」ではなく「ネズミの住処」だったような空気。

「近所の団地が取り壊されてね…ネズミが逃げてきたのよ…」
奥の部屋から出てきたのは、依頼主の女性。白髪交じりの髪に、痩せた頬。
彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。

「私、ずっと一人で……でも、もう駄目だと思って……お願い、助けてください……」

---

第三章:空気と光を、もう一度

「今日の目標は、電気の復旧、雨戸と窓の開放。そして空気の入れ換えと明かりの確保だ」

初日、現場に入るなり、平山はスタッフに作業の優先順位を伝えた。
室内は想像以上に真っ暗だった。電気は通っているはずだが、照明がことごとく壊れている。
窓は雨戸で閉ざされ、風も光も届かない。悪臭が漂い、空気は濁っていた。

一階の状態は、もはや「生活空間」とは呼べなかった。
依頼者の女性は、足腰が弱くなった今、階段を上ることさえ苦労するという。
それでも、まだマシな二階の一室で、コンビニ弁当とインスタント食品で命をつないでいた。
台所はわずかなスペースにガスコンロだけ。お湯を沸かすのがやっとだという。

「ゴミ集積所まで歩くなんて、とても……。だから仕方なく、一階にゴミを置きっぱなしに……」

それが、現在の状況を招いた。
しかし、今からでも変えられる。まずは、家に光と風を取り戻すことだ。


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第四章:暗闇の蛍光灯と、椅子ひとつ

最初のターゲットは、リビングの天井。

だが、そこにはゴミが腰の高さまで積まれ、足場すら確保できない。
天井の蛍光灯を交換するには、周囲の片付けから始めなければならなかった。

「遠藤、椅子になりそうなもん、あるか?」

遠藤が台所に向かい、古びた食卓用の椅子を見つけてくる。
足のぐらつきを確かめ、ゴミをかき分けて中央まで運び込む。
その上に立って、ようやく蛍光灯に手が届いた。

「よし、交換するぞ……」

「パチッ」――音がして、薄暗い明かりが部屋に戻った。
だが、それだけではまだ不十分。部屋の奥、廊下、キッチン、どこも真っ暗なままだ。

「次は窓まで進もう」

光を求めて、西尾と女性スタッフが片付けを再開。
積み重なった衣類や紙類、段ボール、古い電化製品を少しずつ外へ出していく。

ようやく窓の前までたどり着き、雨戸を押し開けると、
「ギギギギ……」という音とともに、数年ぶりの太陽光が差し込んできた。

「風が……入ってきた……」

依頼者が、小さな声でつぶやいた。
その目には、ほんのり涙が浮かんでいた。


---

第五章:仕分けと、思い出の再会

2日目からは、部屋ごとの仕分け作業が本格化した。
「必要な物は、できるだけ残してほしい」という依頼者の要望を受け、
服、小物、雑貨、書類……すべてを分類しながらの作業は、想像以上に時間がかかった。

西尾は几帳面な性格で、ひとつひとつの衣類を丁寧に開き、タグを見て仕分けていく。
古い和服の下から、アルバムが出てきた。

「これは……」

中には、若かりし頃の依頼者と、男の子が笑顔で写る家族写真。
依頼者はその写真を見つめ、手でそっと撫でた。

「この子……離婚してから会ってないの。でも、写真だけは……残しておきたかったの」

西尾は丁寧にラップで包み、「保管用」の箱に入れた。
依頼者は何度も「ありがとう」と呟いた。


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第六章:風が通り抜けた日

7日目。最後の仕上げに、奥の和室の片付けが完了した。
一週間前には、廊下すら歩けなかったこの家に、今はスリッパで歩ける動線がある。

最後に取りかかったのは、二階の電気の復旧。
配線チェックのあと、照明器具の交換も完了し、全体がようやく“家”として機能しはじめた。

「じゃあ、最後の窓、開けますね」

女性スタッフが窓の鍵を回し、ギギィ……と開いた瞬間、
冷たい秋の風が部屋全体に吹き抜けた。

カーテンがふわりと揺れ、埃の舞うその様子はまるで、
家そのものが「ありがとう」と呼吸しているようだった。


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結び:崩れかけた家に、もう一度暮らしを

この家には、ゴミが山のようにあった。
ネズミの糞が敷き詰められ、悪臭がこもり、電気も光も風もなかった。

だが、私たちはただ片付けたのではない。

依頼者の“暮らし”を、そして“心”を、少しずつ再生していったのだ。

「……また、ここでご飯を作ってみようかな」
依頼者が、ぽつりと呟いたその言葉に、全員が笑顔で頷いた。


✨ 完

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