草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月1日
東京の名だたる遊郭が広がる吉原からわずかに歩を進めると、静かな土手沿いに佇む「伊勢屋」の暖簾が、24時間営業の証としてひっそりと揺れている。どんな時間帯でも、またどんな場所からでも、ひとたびこの店の扉を開けると、間違いなく心を満たす一皿が待っている。それが、ここの名物・天丼だ。
先日、私はこの伝説の天丼をその全貌をカメラで収める幸運に恵まれた。店内に足を踏み入れると、瞬く間に香ばしい天ぷらの香りが広がり、瞬時に空気が一変する。揚げたての天ぷらがふわりと浮かぶ、その一膳の天丼は、ただの食事を超え、まるで一つの芸術品のように目の前に現れる。ご飯の上に載せられた天ぷらは、タレが絡み、じっくりと吸い込まれたその色と艶が、見る者に強烈な印象を与える。
伝説によれば、この店はかつて吉原で働く人々にとって、疲れを癒すための唯一無二の場所であり、精力を養うための至高の一皿であったという。深夜に遊郭で働く者たちが、この温かな天丼を求めて足を運び、または出前を取るその姿は、まるで物語の一幕のように今も語り継がれている。精緻に揚げられた天ぷらが、食べる者に力を与え、疲れた身体を癒す様は、まさにここにしかない体験だ。
また、朝帰りの客たちが、日が昇り始める頃、この店の扉を開ける姿が見受けられた。その時、仲間たちと交わす笑顔とともに、彼らが頬張る天丼の一口一口が、彼らの心を温め、今一度その力を取り戻させていた。撮影中、私もまたその一皿を目の前にし、シャッターを切るたびに感じるのは、この天丼に秘められた長き歴史と、人々の思いだった。
天丼が器に盛られるその瞬間、カメラのレンズを通して見た光景は、言葉では表現しきれない美しさを持っていた。香り高い揚げたての天ぷらが、まるで時の流れを包み込むようにその周囲を取り囲み、タレがご飯の上でひとしずくずつ広がる様子は、まるで絵画のように美しかった。
今日も「土手の伊勢屋」の暖簾は揺れ、深夜の街の静寂を切り裂くように、新たな客がその一皿を求めて扉を開ける。遊郭の華やかさが去った今も、変わらぬ味わいで人々の心と体を支え続けるその存在は、まさにこの街の歴史の一部となっている。
店長:平野慎一
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