草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年6月7日
夕暮れの浦和。駅前の喧騒を抜け、住宅街の奥にひっそりと灯る〈Carnegico〉は、まるで隠れた小さな劇場のようだった。今宵、その舞台で繰り広げられるのは、火と肉の対話。そして一皿一皿が、詩のように静かに語りかけてくる。
物語は前菜から始まる。薄く透ける生ハム、やわらかなオレンジのラペ、艶やかなエビ、そしてしっとりとしたサーモン。冷たい皿の上に、小さな四季が咲いているようだった。どれも主張しすぎず、ただそこにある美しさ。
緑のサラダは、空気を変える風。瑞々しさが口の中をなで、次の幕へと誘う。そして現れたのは、熱を湛えたグラタン。香ばしい焦げ目と、ゆるやかにとろけるソース。懐かしさと洗練が同居する、不思議なやさしさを感じた。
メインの赤身肉は、まさに静かな情熱の結晶だった。香り、質感、そしてナイフを入れた瞬間にわかる「火の詩」。中心に宿る美しいロゼ色は、職人の意志が注がれた証。咀嚼するごとに、肉が語りだす。力強く、それでいてどこか儚い。
シメの牛すじカレーは、語尾のようにやわらかい。余韻のあるコク、しずかに染み込む旨み。肉の一夜を締めくくる、温かな手紙のようだった。
最後にそっと供されるデザートまで、すべてが優しい構成。飾り気はない。だが、忘れがたい。
皿の上に、静かな詩情があった。〈Carnegico〉の料理は、声高には叫ばない。ただ、火と素材と技が奏でる小さなうたとして、記憶のどこかでふと響きつづける。
店長:平野慎一
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