草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月2日
都内某所。地図には存在せず、ネットで検索しても一切情報が出てこない。この場所に足を踏み入れるには、紹介者と厳正な審査が必要だという。政財界、文化人、限られたVIPだけが知る、完全会員制のサロン。その密やかな空間で、私は奇跡的に撮影の機会を得た。
供された料理は——ナポリタン。目を疑った。だが、ひと目でそれが「本物」だとわかった。
鉄板ではなく、陶器に盛られたケチャップのスパゲッティ。パスタはアルデンテではない。やや柔らかめに茹で上げられ、どこか懐かしさすら漂う。だが、ケチャップの甘さと酸味、隠し味に忍ばせた熟成バルサミコと発酵バターが絡み合い、ただの「懐かしさ」で終わらない深みがある。具材はベーコン、ピーマン、玉ねぎ。どれもが一点の曇りもない質と火入れ。その一皿から立ち上る香りは、静かに、確実に、五感を揺らした。
撮影の間、私は不思議な気配を感じていた。湯気のゆらぎ、陶器の陰影、わずかに跳ねるソースの照り。そのすべてが、この空間の静謐な空気と重なっていた。
グルメの果てにあるのは、高級ではなく“原点”だった。そう、このナポリタンは「ただの懐かしさ」ではない。それは、あらゆる贅沢を知り尽くした者だけが見出す、究極の一皿だった。
店長:平野慎一
料理撮影なら日本フードフォトグラファー協会正会員で間違いなし!
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