草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年4月27日
都内某所。その場所を知る者は、ほんのひと握り。名前も場所も、どこにも記されてはいない。そこは、政財界のごく限られた人々だけに許された、会員制のサロン。
今回、その空間で撮影という特別な機会をいただいた。店にはメニューがない。その日、その時、一番輝いている食材が目の前に並べられ、客は静かに、自らの心と対話しながら、仕立てる料理を選ぶ。
私のカメラの前に置かれたのは、雲丹のお造り。器は、雲丹そのものの殻。まるで海からそっとすくい上げた月のしずくのように、粒はつややかで、繊細な透明感を帯びていた。
口に運べば、波間の記憶がほどけるように、静かに甘みが広がる。添え物も、飾りも、なにもない。あるのは、雲丹という素材と、それを支える静謐な器だけ。
その姿を収めるため、私はただ光を整え、空気を澄ませる。シャッターを切る音さえ、息をひそめるようだった。
この一皿には、語りすぎない強さがある。丁寧に研ぎ澄まされた美が、見る者の心を静かに揺らす。
それはまるで、誰にも明かされることのない、ひとりの女性の芯の強さと、しなやかさに触れたかのような――そんな、密やかな贅沢だった。
店長:平野慎一
料理撮影なら日本フードフォトグラファー協会正会員で間違いなし!
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