草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年4月25日
都内のどこか。けれど、その場所を知る者は、指の間からすり抜ける砂のように、あまりにも少ない。地図にも、検索にも、記録されていない。ただ、選ばれし者の記憶の奥底にだけ、そっと棲んでいるサロンがある。
静寂が、壁を照らす灯のように優しく揺れ、会話さえも、まるで作法のひとつのように慎ましい。その場に供された、雲丹のにぎり。
軍艦の形を借りずとも、ひと握りで語り尽くせるほどの自信。粒はつぶれず、崩れず、ただ自然に在る。黄金にも似た色を湛え、光を宿すようなその透明感は、まるで海そのものを封じ込めたかのよう。
シャリは、空気をふわりと抱き込んだ羽毛のよう。口に運べば、呼吸とともにほどけていく。熱さも冷たさもない、絶妙な温度――それは、熟練の勘と、魂の温度。
そして今回、幸運にもこのにぎりを撮る機会を得た。光の置き方ひとつ、角度ひとつに気を配りながら、この一貫が放つ静謐な美しさと、その場の空気までも写し込むように、シャッターを切った。
「雲丹とは、ここまで昇華できるのか」そんな問いを、言葉の代わりに喉の奥で呑み込む。答えはいらない。この場所に、この一貫が在ったという事実だけが、静かに心を震わせる。
忘れていい。けれど、決して忘れられない、そんな夜のひと握り。
店長:平野慎一
料理撮影なら日本フードフォトグラファー協会正会員で間違いなし!
<関東>
埼玉県
千葉県
東京都