草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月27日
それは、焼かれることを前提としながら、すでに完成された美だった。
神田駅南口を出てほど近く、「焼肉 神田精肉店」の一角にて、黒毛和牛A5ランクのカルビを撮影する機会を得た。焼く前の肉が、これほどまでに語りかけてくるとは思わなかった。
皿の上には、まるで静謐な花が咲くように整えられたカルビ。深みある赤身に、まるで絹を刷いたような白い霜降りがそっと交差する。脂は決して過剰ではなく、あくまで引き立て役として赤身に寄り添っている。その姿には、職人の審美眼と誠実な手仕事が感じられる。
カメラを構えると、レンズ越しに肉の質感が迫ってくる。瑞々しい艶、整った厚み、重なる断面の奥行き。どれもが丁寧に選ばれた証であり、食材である前に、ひとつの作品のようだった。
「赤身と脂のバランスが命なんです」と、そっと添えられた店の言葉も印象的だった。
たしかに、ひと目見ればそれが嘘でないとわかる。甘やかで、静かで、力強い。
火にかければ、もちろん旨いに決まっている。けれど、皿の上のこの一瞬には、まだ誰の手も加えられていない肉そのものの詩情がある。
撮るという行為の中で、私はその詩を、ただ静かに記録していた。
神田にて、焼かれる前の和牛に心を奪われる日が来るとは。
店長:平野慎一
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