草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年7月10日
初夏の気配がしっとりと街を包みはじめた頃、市川の老舗和食処「波奈」にて、メニュー撮影の機会をいただいた。
この日の主役は、鱧の湯引き。透明感を帯びた白身が、氷の上にひっそりと横たわる様は、まるで早朝の庭に咲いた朝顔のような儚さと凛とした気配を湛えている。
鱧は、味わう前にまず技術が問われる魚だ。細かな骨切りの一刃一刃が、そのまま料理人の美意識を映し出す。波奈の鱧は、刃文のように静かに揺れる身の輪郭が美しく、丁寧な仕事が視覚からも伝わってくる。
淡い白に、そっと添えられた紅の梅肉。色の対比はさながら和の小袖のようで、涼やかな風が通り抜けるような余韻を残す。撮影中、光の角度を探る指先にも自然と慎みが宿り、静寂の中にただ料理の美しさが際立つ。
波奈という空間が持つ、品格ある静けさ。そこに供される一皿が語る物語を、写真というかたちで封じ込めたひとときだった。
――白妙に揺らぐ初夏の午後、鱧の清らかな佇まいに、和の心を見た。
店長:平野慎一
料理撮影なら日本フードフォトグラファー協会正会員で間違いなし!
<関東>
埼玉県
千葉県
東京都