草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月30日
春の佐原。水郷の静けさに包まれた町並みに、ひっそりと佇む「オーベルジュ ド マノワール吉庭」。その凛とした空間で、春のコース料理の撮影に向き合った。
主題は、赤身肉のステーキ。
白い陶器の上、赤と焦げ目の濃淡が織りなすグラデーションに、ひときわ深い黒が寄り添う。薄く削られたトリュフだ。無言の存在感が、皿に奥行きを与えていた。
光は柔らかく、午后の空気をまとっていた。ステーキの断面にふと現れる、ロゼ色の濃淡。ナイフを入れてはいないのに、肉のしっとりとした質感が、こちらに語りかけてくるようだった。
レンズを通して伝わるのは、技術と丁寧さの積み重ね。火の入り方が、まるで静かな呼吸のように穏やかで、整っている。
構図を探しながら、料理人の所作と意図を読み解く。無駄がなく、美しい。
吉庭の料理には、余白という美学がある。すべてが盛り込まれているのではなく、語るべきことだけが残されている。
その潔さに、静かな気迫が宿る。
一枚の写真に、音も香りもない。
だからこそ、見る人の中にそれらを立ち上がらせることが、私の仕事だ。
この赤身のステーキには、優雅な熱があった。シャッターを切るたびに、それが静かに伝わってくるようだった。
店長:平野慎一
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