草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年10月5日
ぴあ発行『東京老舗名店』の撮影で、両国のももんじやを訪れた。
創業は天明年間。江戸の狩猟文化をいまに伝える、日本最古のももんじ屋である。
静かに佇む店構えには、時の層が宿る。猪の剥製が掲げられた玄関を抜けると、磨かれた木のテーブルが整然と並び、古色と清潔さが共存する空間が広がっていた。
撮影したのは名物の猪鍋。
丹波篠山から届く肉の赤と白、その境に潜む温度を捉えるため、ストロボの光を緻密に組んだ。
照度をわずかに傾け、脂の面に柔らかな反射を置く。
派手な湯気を追わず、火にかける直前の静謐な瞬間を選ぶ。
鉄鍋の輪郭に沿って光が滑り、深紅の肉が息づく。そこに、料理の骨格があると思った。
長い時間を経ても、料理は過去に沈まない。
割り下の照りに、江戸の知恵と誇りが滲む。
撮影を終えたあともしばらく、鍋の余熱のようなものが、ファインダーの奥に残っていた。
光を整えることは、歴史を静かに聴くことに似ている。
その日、ももんじやの鍋の前で感じたのは、時代を越えてなお澄んだ“熱”の記憶だった。
店長:平野慎一
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