草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年11月6日
新中野の「HOBO TACOS」。昼の光がやわらかく差し込む厨房で、星シェフが静かにトルティーヤを温めている。撮影は、誠文堂新光社『はじめてのメスカルの教科書』の一頁。メスカルに寄り添う一皿として、星シェフが選んだのは「モレチキンタコス」だった。
モレはメキシコ・プエブラ州に伝わるソース。チョコレート、唐辛子、ナッツ、野菜──多層の素材をゆるやかに煮込み、甘やかさと辛み、香ばしさと酸味がひとつに溶け合う。星シェフの手にかかると、その濃密さは不思議と澄んで、重さを感じさせない。
カメラを構えると、光を受けたモレの艶が静かに呼吸をしている。奥行きのある褐色のなかに、微かな温度が宿る。トルティーヤの香ばしさが空気に混じり、そこへメスカルの、大地と火を思わせる穏やかな香りが寄り添う。香りの層が重なり、時間の輪郭がやわらかく滲んでいく。
撮影とは、光の中に息づく気配をすくい取る仕事だ。星シェフの一皿に映るのは、伝統を軽やかに受け継ぐ手の確かさ。そしてその奥にある、静かな祈りのような熱。モレの深みにレンズを向けながら、ゆっくりと確かめた。味わいも光も、澄んだところにこそ、深さがある。
店長:平野慎一
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