草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年4月4日
利根の水運に栄え、今も江戸情緒を色濃く残す町、佐原。その静けさに寄り添うように佇む「オーベルジュ ド マノワール 吉庭」は、美しい庭と、季節を慈しむ料理でもてなしてくれる。
この日、撮影させていただいたのは、旬を映す松花堂弁当のランチ。凛とした木の箱の中に、春が息づいていた。
蓋をそっと開ければ、まず目を奪われるのは前菜の彩り。ふきのとう、菜の花、薇──ほろ苦さの中に、芽吹きの生命力を宿す野の恵みが、繊細に盛り込まれている。続くお造りには、赤身の引き締まった艶と、包丁の冴えが光る。その静かな佇まいからは、料理人の研ぎ澄まされた感性が感じられる。
焼き物には、旬魚のしっとりとした旨味。鉢物には、澄んだ出汁の香りがふわりと立ちのぼる。どのひと品も、声高に語ることなく、そっと季節の輪郭を描いている。華やかさと抑制が共存する、和の美学がここにはある。
ごはんには、名産・多古米を使用。炊き立ての湯気に包まれながら、ふっくらと甘く、ひと粒ひと粒が口の中でほどけてゆく。お味噌汁とともにいただけば、自然と肩の力が抜けていくようだ。食後には、丁寧に仕立てられたデザートと、コーヒーまたは紅茶の余韻が待つ。
この松花堂は、ただの“昼餉”ではない。四季を愛し、素材に耳を澄ませる心が、ひと折の中にそっと織り込まれている。
春の午後、揺れる木漏れ日を眺めながら。その一膳が教えてくれたのは、日々に潜む、和の静謐な豊かさだった。
店長:平野慎一
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