草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月19日
その一皿が現れた瞬間、空気が変わった。
浅草「肉×日本酒 Fukuya バル」にて撮影した「竹取物語 肉寿司 4貫盛り」は、ただの料理ではない。まるで一幅の物語が、竹の上にそっと置かれているかのようだった。
青竹の中には砕かれた氷が敷き詰められ、そこから白く妖艶なドライアイスの煙が静かに立ち昇る。その立ち姿は、まるで月から地上に舞い降りたかぐや姫を包む霞のよう。人工的なライティングを用い、陰影を際立たせたことで、煙と氷と肉が三位一体となり、幻想的な世界を現出させることができた。
主役たる肉寿司は、赤身に程よくサシが入り、繊細な刃で切り揃えられた姿が美しい。舌の上でとろけるその質感は、視覚の段階で既に語りかけてくる。「ただ美味しい」では言い尽くせない、滋味深い旨みの層がある。
そして、この舞台に欠かせぬもうひとつの登場人物が、日本酒である。店主が各地から蒐集した珠玉の銘柄が冷蔵ケースにずらりと並び、その中には流通数が限られた幻の一本も。100ccから頼めるため、肉の一貫一貫に寄り添うようなペアリングが叶う。撮影の合間、ふと口に含んだ純米大吟醸が、肉の余韻を静かに引き伸ばしたのが忘れられない。
喧騒の浅草にあって、このバルはまるで異空間。静謐な光、冷ややかな煙、そして紅の肉が交わるこの場所は、俗世を離れた宴の舞台装置だ。
私のカメラは、それを“記録”するのではなく、“証明”した。
この一皿が語るのは、料理という名の芸術の極みである。
次にあなたがこの扉を開ける時、その一瞬もまた、きっと壮麗な物語となる。
店長:平野慎一
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