草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年9月28日
──9月26日、『東京老舗名店』(ぴあMOOK刊)の取材で湯島・鳥つねを訪ねた。大正元年(1912年)創業の老舗であり、昼は親子丼、夜は鶏鍋やコース料理で知られる名店だ。今回撮影したのは、そのコースを彩る「しんじょう揚げ」である。
卓上に供されたそれは、派手さを纏うことなく、穏やかな揚げ色をまとっていた。衣はきめ細かく、光を受ける角度によってほのかな陰影が立ち上がる。私は撮影に際し、照明をやわらかく調整し、その表面に宿る質感を素直に捉えることを心がけた。過度に演出するのではなく、揚げ物そのものが持つ静けさを画に残したかったのである。
鳥つねの「しんじょう揚げ」は、鶏のすり身を丹念に仕立てたもの。口にすれば、しっとりとした舌触りと共に鶏本来の旨みが広がり、衣の軽やかな香ばしさが寄り添う。常連客の中には「これだけでご飯が欲しくなる」と評する声もあるというから、その存在感は決して脇役ではない。
親子丼の濃厚な世界を知る人にとっては、また別の角度から鶏の奥行きを感じさせるひと皿だ。コースの中にひと呼吸を生み、食べ手の感覚をそっと整えていく。写真家として、その静謐な佇まいを切り取れたことは大きな歓びだった。
湯島の路地に佇む老舗が守り続ける鶏料理。その世界の入口に現れる「しんじょう揚げ」は、穏やかでありながら、記憶に残る余韻を確かに刻んでいた。
店長:平野慎一
料理撮影なら日本フードフォトグラファー協会正会員で間違いなし!
<関東>
埼玉県
千葉県
東京都