草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年9月22日
バニラの白に、黒い滴が落ちる。
熱を帯びたエスプレッソが、冷たさを侵しながら、甘さと苦みの境を曖昧にしていく。瞬く間に溶けゆく氷原のように、アイスは静かに姿を変え、カップの中に小さな宇宙を描き出す。
舞台は、HONOLULU COFFEE HARAJUKU。
木漏れ日のような光が射し込む店内で、私はカメラを構えた。
その瞬間の揺らぎを、いかに捉えるか。
溶解と融合、甘美と苦渋――相反するものが交わる刹那を、一枚の写真に封じ込めたい。
もう一方に控えるのは、抹茶のアフォガート。
深い緑は静謐であり、苦みは鋭利な刃のよう。
けれど、その鋭さを包み込むのは、やはりアイスの柔らかさ。
和と洋、苦と甘。対立するはずの色彩は、器の上でひとつの調和を奏でている。
レンズを覗けば、黒と緑の対話が見えてくる。
光を受けて艶めく表情は、まるで言葉を持たぬ詩のようだ。
甘味を口にする前に、視覚がすでに心を満たしていく。
原宿の喧騒を離れ、ほんの数分。
溶けて消えゆく一匙の夢を、私は確かに写し取った。
写真は、刹那を永遠に変える。
そしてアフォガートは、その永遠に、ほろ苦い余韻を残していった。
店長:平野慎一
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