草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月6日
銀座数寄屋橋。喧騒をすり抜け、静かにエレベーターを降り立つと、そこには時の流れを忘れさせる、気品ある空間が広がっていた。「ざくろ」。老舗の名にふさわしい、和の様式美に満ちた店である。
撮影に臨んだのは、昼のすき焼き御膳。A3等級黒毛和牛の肉は、過度に脂の主張をせず、赤身の繊細な濃淡が視覚を捉える。霜降りの模様には、品位と実直さが同居しているようだった。
注目すべきは、この空間に射し込む自然光の妙である。店は地階にありながら、地上からの柔光が設計された吹き抜けを伝い、ゆるやかに落ちてくる。石庭のように設えられた中庭が、地下であることを忘れさせ、時間の輪郭をぼかす。撮影者にとって、これほど贅沢な「陰翳礼讃」の場はない。
すき焼きの鍋には、長ねぎ、白滝、春菊、豆腐、椎茸といった具材が端正に配され、割り下の鏡面が静かにそれらを映す。器もまた、風格のある仕覆のように全体を包み込む存在だ。光と影の綾が、料理の表情を幾通りにも変え、レンズを通してなお、料理が語りかけてくるかのようであった。
食後、軽やかに供された甘味とともに席を離れると、ふたたびあの穏やかな光が目に触れる。銀座の地階、という立地を超えた設計美と、料理人の真摯な技。その両者が交錯する「ざくろ」の昼には、確かに、撮るべき理由があった。
店長:平野慎一
料理撮影なら日本フードフォトグラファー協会正会員で間違いなし!
<関東>
埼玉県
千葉県
東京都