草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年4月30日
都内某所。店名も、場所も、語られることはない。ただひと握りの人々が、その存在を「知っている」。政財界を中心に、限られた者たちがひっそりと集う、完全会員制のサロン。
その空間は、音を吸い込み、気配を研ぎ澄ませる。食とは語るものではなく、感じるものだと、まるで教えられているような場だった。
供されたのは、蕎麦。肩の力が抜けるような、しかし一切の緩みを許さない凛とした一碗。
きりりと締められた蕎麦は、瑞々しく、まっすぐに揃っている。つややかな細身の麺が、光を受けて静かに艶めく。水をくぐらせたあと、ほんの一瞬空気に触れさせる。その一手間が、香りを立ち上がらせ、喉越しに余白を生む。
つゆは出過ぎず、引きすぎず。甘さも、辛さも、すべてが等距離に保たれているようで、一滴が蕎麦の芯を際立たせてくれる。
撮影のレンズ越しに見えてきたのは、手を加えすぎないという勇気だった。余白は恐れず、語らぬことで伝える。この蕎麦は、「食べる」だけでなく、「向き合う」料理なのだ。
喧騒から切り離された場所で、ただ静かに、一筋の蕎麦を啜る。その行為に、どこまでも深い意味が宿っていた。
店長:平野慎一
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