草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月5日
どじょうは、派手な料理ではない。
滋味という言葉の奥に、ひそやかに息づく食の記憶だ。
浅草・駒形の「駒形どぜう」で、その鍋を前にした。
歴史ある店構え。陽が傾くと、格子からこぼれる光が畳を染め、時間がゆるやかに巻き戻る。
供されたのは、鉄鍋に整然と並んだどぜう。割下でやわらかく煮られた魚体は、骨まで崩れるほどにやさしく、火が入るほどに香りが立つ。
山のように盛られた白葱が、その香ばしさを引き締める。手を加えすぎず、しかし放っておくわけでもない。江戸前の美学が、鍋の中にそのまま息づいている。
この日は、そのどぜう鍋を撮影した。
静かに湯気が立ち上がる瞬間、脂が照りを増すわずかな光の揺らぎ。写真に収めたかったのは「料理」そのものというより、「時間」や「空気」だったのかもしれない。
料理には、流れる風景がある。
味も香りも音も写せないぶん、写真はその空気の手触りを写すものだ。
駒形どぜうの鍋は、まるで江戸の記憶が煮立っているようだった。
今も昔も、この町の食欲を静かに支えてきた、ささやかで、深い一椀。
撮ることで味わうという経験が、ここにはあった。
店長:平野慎一
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