草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年7月7日
六本木の喧噪を一歩離れた先、まるで月明かりに導かれるように佇む料理屋「月灯花」。その名のとおり、闇に灯るほのかな光のような存在だ。今回、私はこの店で供される「うな茶漬け」の撮影を行った。
撮影の狙いは、ひとしずくの出汁が生む一瞬の美。その瞬間を、私は執拗なまでに待ち続けた。鰻の身の上に、熱を帯びた出汁がそっと注がれる。張り詰めた空気の中、琥珀色の液体が鰻を撫で、白米の隙間を満たしてゆく。そのとき立ちのぼる香りは、香ばしさと旨み、そしてわずかな甘さを帯び、まるで時の流れを遅くするような深さがあった。
鰻は、ふわりと蒸しあげられ、表面にほのかな焼きの香りを纏う。ご飯とひとつになったとき、その姿はもはや“料理”という言葉では足りない。静謐で、温かく、どこか懐かしい情景を喚起させるひと椀。
月灯花の料理には、声高な主張はない。ただ、月の光のように静かに、けれど確かに、食べる者の心に触れてくる。この夜、私がレンズに収めたのは、一枚の料理写真ではない。季節と技と想いが溶け合う、儚くも美しい時間のかけらだった。
店長:平野慎一
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