草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年7月3日
六本木の片隅、喧騒がふと途切れる静謐の路地に、ひとひらの月影のように「月灯花」は佇む。灯のごとく静かに、花のように柔らかく。そこに流れるのは、時間ではなく余白である。
このたび、当店にてコース料理の撮影をお引き受けした。器に咲いた一皿一皿を前に、構図を定める手元までもが自然と慎ましくなる。美を記録するというより、そっと寄り添うような心持ちで、私はシャッターを切った。
先付けには、鮪、鯛、鰤など、いずれも凛とした姿の造り。清流を思わせる鮎の塩焼き、やわらかな光をたたえた白和え、そして湯引きされ炙られた鱧が続き、味覚は徐々に深まりゆく。火入れの妙が際立つステーキが、流れに品格を添え、終幕には蟹、いくら、雲丹が惜しみなく盛られた土鍋ご飯。香り立つ湯気が、物語の余韻をふんわりと残す。
料理は語らずとも、すでに詩である。その佇まいを、光と影を頼りに写し取る。撮影者としての役目は、技巧よりも敬意にこそ宿るのだと、あらためて教えられた時間だった。
「月灯花」は、食をもって季節を描き、静けさを味わう場所。賑わいの都・六本木にあって、そこだけは別の時が流れている。ひと夜のうちに、心をゆるやかにほどく場所として、そっと記憶に灯しておきたい。
店長:平野慎一
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