草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年5月4日
文京・小石川の一隅、喧騒を忘れさせるような静けさに包まれた住宅街に、うなぎ料理の名店「わたべ」はある。玄関先の暖簾をくぐると、そこには時間の歩みすらゆるやかに感じさせる、落ち着いた空気が広がる。
本日いただいたのは、店の看板とも言える「えんま重」。ひとつの重箱に、蒲焼と白焼き、二種のうなぎが端然と並び、その姿にまず心を打たれる。職人の手により炭火で焼き上げられた蒲焼は、甘みと深みをたたえたタレを艶やかにまとい、見た目からすでに芳香を放っている。一方の白焼きは、潔い塩と山葵で供され、素材の滋味を静かに、しかし力強く訴えかけてくる。
撮影の折には、光の設計に格別の注意を払った。自然光はあえて抑え、ストロボの光を細やかに操り、蒲焼の照りに陰影の立体感を、白焼の焼き目には繊細な質感を浮かび上がらせる。画面の中でふたつの味わいが静かに響き合う構図を求め、幾度となく微調整を重ねた。
食事の締めくくりには、刻んだ鰻をご飯にのせ、熱々の出汁をかけていただく「うなぎ茶漬け」。そのひと口が、すべての味の記憶をやさしく溶かし、包み込んでくれる。まさに、物語の終章にふさわしい一椀である。
「えんま重」は、ひとつの重の中に、静と動、雅と素朴が見事に共存する一皿。 この店にて供されるうなぎは、料理というより、ひとつの作法であると、心から申し上げたい。
店長:平野慎一
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