草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年4月29日
扇のようにしなやかな風が抜ける、台東区・根岸。
この町の静寂の中に、ひっそりと佇む「蒲焼割烹 根ぎし 宮川」。老舗の暖簾をくぐると、磨かれた木の香りとともに、時間の流れが変わるのを感じた。
撮影したのは、昼のコース料理「あさがお」。
始まりは、お造り。きめ細やかに刃を入れられた白身が、艶めく器の上で身じろぎもせず、ただこちらを誘う。舌に触れたときの冷ややかな感触に、早くも心はほぐれてゆく。
次いで、煮物。艶やかな煮汁がまとわりつく根菜の柔肌。慎ましくも、奥に秘めた色気がある。小鉢たちは、まるで内緒話をするかのように、少しずつ、異なる表情でこちらに語りかけてくる。
天ぷらは、さらりとした衣をまとい、油の香りを纏って現れる。サク、という音とともに、揚げたての熱が舌をくすぐる。この時点で、五感はすでに溺れている。
そして、鰻重。蓋を開けた瞬間、立ちのぼる香に、つい目を細めた。照りと艶のあいだで、蒲焼が静かに横たわっている。蒸しの柔らかさと、焼きの香ばしさ。その両極の美を纏った鰻は、まさに一口ごとに官能を帯びてゆく。
老舗の余裕と、職人の色気。
「宮川のあさがお」は、昼という時間を妖しく艶やかに染める、美しい誘惑だった。
店長:平野慎一
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