草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年12月11日
六本木の「ラトリエ・デュ・パン」で、ポスター用のイメージ撮影を行った。店に足を踏み入れると、まず空気がふわりと揺れる。発酵の甘い香りと、焼き上がる瞬間の緊張が同居した、あの独特の気配だ。
今回の撮影は、店の象徴でもある石窯を背景に据えた。手前には、焼き色の異なる数種のパンを積み上げる。重なり合うクラストの表情は、職人が積み重ねてきた時間の層そのもの。光を置く位置を数センチ単位で変えながら、焼き色の深さや粉の質感が最も素直に語りだす瞬間を狙った。
背景では、職人がパンを石窯へと滑り込ませるシーンを切り取る。余計な演出は一切いらない。石窯の奥から立ち上る熱気、窯の縁に刻まれた使い込みの痕。それらが、パン作りの営みをそのまま映し出してくれる。私はただ、その“今”を正確に写し取ることに集中した。
レンズ越しに見るパンは、生きている。焼き上がる前の静けさと、焼けた後の華やぎ。その境界線に宿るドラマを、どうすれば一枚のポスターに封じ込められるか。撮影の最中、ずっとその問いが頭の片隅にあった。
六本木という街の真ん中で、日常の糧を丁寧に焼き続ける一軒のベーカリー。その姿勢が、今回の写真に確かな芯を与えてくれた。撮影を終え、石窯の温度がまだ腕に残るうちに店を出る。あの熱気が、画面にも宿っているはずだ。
店長:平野慎一
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