草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年6月12日
茨城の地に、イタリアの春が咲いた――そう言いたくなる、美しきコース料理と出会った。
幕開けは、アメーラトマトとブラータによるカプレーゼ。まるで宝石をあしらったオペラの序曲。凝縮された果実味と、クリーミーなブラータが溶け合い、静かに、しかし確実に味覚を覚醒させてゆく。
続く前菜の盛り合わせは、まさに前菜という枠を超えた小宇宙。ロジャーノチーズを冠したサラダを軸に、その日の仕入れによって変容する一皿一皿が、食材と技の饗宴を奏でる。ひと口ごとに、風土の香りと職人の矜持が滲み出す。
潮騒の余韻を帯びて現れたのは、鹿島灘産・大はまぐりの白ワイン蒸し。その貝殻の奥には、海の記憶と芳醇な香りが宿り、口に含めば波が寄せるように、旨味が静かに押し寄せてくる。
地元野菜のミネストローネは、陽光を湛えた滋味の器。野菜一つひとつが持つ生命の声を掬い上げ、優しく、力強く、身体を包み込む。
パスタは、春の象徴たる桜鯛とそら豆の出会い。その艶やかな身に、そら豆のほろ苦さが絡み、まるで季節そのものを啜るような感覚に陥る。そこには技巧ではなく、詩がある。
そしてクライマックスは、鮮魚のアクアパッツァ。皮目は香ばしく、身はしっとり。白ワインと魚介、香草の重奏がひとつに溶け合い、完璧な静寂を生む。口を閉じ、余韻に沈む。もう言葉は不要だ。
ここには、ただ“美味”では済まされない、料理という芸術の劇場があった。
店長:平野慎一
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