草加市のラ・クレアシオンのブログ
2025年6月2日
音もなく運ばれてきた皿の上に、それはあった。光を僅かに受けて、表面に浮かぶ肉汁が鈍く艶めく。切られることなく、蒸気も立たない。けれどそこには、目を奪われる“静かな力”が確かにあった。
浦和の赤身肉専門店「carnegico」。この地にありながら、まるで遠い山間の庵で修められた技のような、凛とした佇まいのハンバーグ。脂を多用せず、赤身という素材がもつ旨みを一点に凝縮させることで、肉の本質が浮かび上がる。
見る者に語りかけてくるのは、刹那の華やぎではない。じっと見つめるほどに、その表面に滲む肉汁の煌めきが、まるで時間の流れを封じ込めたかのような余韻を醸す。塩梅も火入れも、すべてが計算ではなく“呼吸”のような自然さで整えられている。
ひと口、ふた口と重ねるごとに、舌の奥でほのかに立ち昇る旨み。派手さの裏に隠れた“静けさ”こそが、真の滋味を宿すのだと教えてくれる。強く主張せず、しかし揺るぎない輪郭をもつこの味は、職人の無言の祈りのようでもある。
ただ美味であることを超えて、食とはなにかを問いかけてくる一皿。“carnegico”のハンバーグは、まさに幽玄。肉という素材が、言葉なく己を語る、そんな希有な体験だった。
店長:平野慎一
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