上尾市の出張撮影カメラマンあおやぎのブログ
2021年6月11日
お宮参りとかお食い初めの写真撮影を依頼されることも多くなり、そこで、この産育に関しての「犬」と「石」の信仰というものに興味が出てきました。
「犬」に関してはすでに何度も書いているし、本にも「子安犬」として掲載しているので、今回は「石」についてです。
新谷尚紀著『生と死の民俗史』(昭和61年 木耳社)、「境界の石」「産育の石をめぐる民俗心意とその儀礼的表現のメカニズムには、
「同じく小石を身近におきながら妊娠、出産、育児の各段階でそれぞれ民俗としての意味づけが異なっているという点である。出産以前においては、子授けや安産、出産前後には産神、離乳のころには歯がため、というふうにである。」
とあります。
多摩川浅間神社境内には主祭神の木花咲耶姫が炎の中で出産したという故事にちなんで、子産石や夫婦銀杏などもあります。
子産石とは自然石で、長い年月をかけて海の波で削られて丸くなり、本体の大岩から分離してできたものだそうです。まるで子どもが産まれるように。だから「子産石」の名前が。撫でると子どもに恵まれるという言い伝えもあります。別名「子宝石」です。
『生と死の民俗史』にも、著者の新谷氏が、神奈川県横須賀市久留和海岸へ子産石を探しに行ったことが書いてあります。今も「子産石」というバス停があるのですが、google mapで見ると、丸い石が置いてあるようです。
磯部の岩が波で削られて丸い石が分離してくるらしい。
岩に傷がつく。傷が大きくなり溝になる。溝の間に水が入って岩が割れる。割れた石が波の力で回転を始める。そして角が取れて丸くなる、ということらしい。でもかなりの時間がかかっています。
新谷氏も海岸で1個見つけています。地元の漁師に見せたら、これが子産石だといわれたそうです。今でも探すことができるのでしょうか。
今まで見た中では、他に丸い石は、神鳥前川神社の「子産石」や、越谷香取神社の「安産の石」があります。綾瀬稲荷神社に富士塚があって、そこにまん丸の石が載っていますが、これもそうなのではないかなと思います(確かめていませんが)。
川でも水流によって丸い石が分離してくるという話は、確か「ブラタモリ」でもやっていたように記憶しています。そしてツイッター上には、山梨県に丸石が「道祖神」として祀られているという例もあるようです。この道祖伸の石は、河原に落ちていたものだそうです。これはぜひ見に行ってみたいものです。
どれも、まん丸で、見た目だけでも「普通じゃない、特別の石、珍しい石」と思うのですが、大きな岩から「生み出された」という生成の経緯を聞くと、なおさら丸い石が子授け祈願と結びつくのが分かるような気がします。(七社神社の「子の石」は、まん丸ではないので、ちょっとタイプが違います)
出産のときは、石を手元に置くことがあるそうですが、そのときは、石は産神、お守りになるらしい。石のパワーをもらって、出産を無事に済まそうということ。
その後、赤ちゃんが生まれて100日後にはお食い初めの儀式です。ここで使われる石は、『生と死の民俗史』によれば、河原や海辺や雨に打たれたような石が良いのだそうです。「水」が関係する場所の石です。
栃木県のある神社で撮影した時は、お宮参りした時、神社の境内から石を拾って、それをお食い初めのときに使うと言っていた親御さんもいました。本殿により近いところに落ちている石が良いと言っていました。
だいたいは、お宮参りをしたあとお食い初めする親御さんが多く、歯固めの石は、すでに儀式を行う店で用意してあるので、どこから持ってきた石かはわかりません。だいたいは、まん丸ではないけれど角のない石が多いです。
歯固めの石については、歯が丈夫になるようにとか、骨が堅く丈夫になるようにとか、堅い(堅実な?)性格に育つようにとかいわれているようです。歯、骨、性格、いずれにしても、石の堅さをもって祈願するものです。
歯固めの石は、使用後は、神社に返すというところもあります。
このように、産育の民俗において、石はその場面場面で、いろんな役割を果たしています。
店長:青柳健二
プロのカメラマンとして撮影歴は30年。愛犬と暮らすカメラマンが、一眼レフカメラと犬笛を持ってお伺いします。
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