戸田市の株式会社ストック建築事務所のブログ
2025年6月18日
こんにちは。一級建築士の牛山です。
夏本番が近づき、エアコンや扇風機が欠かせない季節になりましたね。
ところで皆さん、「水道水の温度」について意識されたことはありますか?
私は昨年、水道水の温度が原因でキッチン全体がカビだらけになるという、思いがけない事例に直面しました。
この仕事をしていても、これは初めてのケース。原因を突き止めたときは、「これは自分を褒めたい」と思ったほどでした。
■冷たすぎる水道水が原因? 驚きのカビ被害■
この出来事は、千葉県内のごく一般的な住宅地で起きました。
「キッチン下の収納がカビ臭い」とのご相談を受け、現地に伺ったところ、キャビネットを開けた瞬間、異変がはっきり分かりました。
キッチンシンクの裏側がびっしょり濡れており、まるで水漏れでも起きているかのような状態。
キャビネットの底板や側板には水分が染み込み、木材部分を中心に黒カビが広範囲に繁殖していました。
さらに、収納されていた食器や調味料にもカビ臭が移っており、日常生活にも影響が出る深刻な被害でした。
■水漏れではない?疑問から始まった原因調査■
当然、最初に疑ったのは「水漏れ」です。排水管や給水管の継ぎ目、パッキン周辺、床下まで丁寧に調査しましたが、水が漏れ出している形跡は一切なし。
次に可能性として挙がったのは「結露」でした。
しかし、周囲には冷蔵庫やエアコンなどの冷気を発する機器もなく、なぜこんなに広範囲に結露するのかが分からない。
キャビネット内は閉鎖空間で通気も悪く、湿気がこもりやすいとはいえ、ここまでの水分量は異常でした。
■サーモグラフィーが教えてくれた“まさかの原因”■
それでも原因が見えず、念のためサーモグラフィーカメラで調査を行いました。
すると、水道管やシンク下の配管部分が異様に冷えていることが判明。
測定した水温はなんと12℃台。
その瞬間、「これが原因だ」と直感しました。
冷たい水がステンレスシンクや金属配管に触れることで、その表面が冷やされ、室内の湿った空気と接触して大量の結露を生んでいたのです。
まさか、夏の住宅で「水道水の温度」がここまで低くなり、結露の原因になるとは……。
これは私たちにとっても初めての経験でしたが、建築士としての知識と経験を総動員してたどり着いた答えに、自分でも納得できる仕事ができたと思っています。
■水道水の温度は、地域や環境で変わる■
水道水の温度は、季節によって変化するのはもちろん、地域や配管の経路によっても大きく異なります。
都市部では水温が15〜20℃程度で安定していることが多いですが、次のような条件が重なると、思いのほか水温が低くなることがあります。
・地中深くを通る配管
・日当たりの悪い敷地(北側など)
・外気温が安定しない季節(梅雨時や朝晩涼しい時期)
・比較的新しい配管で保温材が施工されていないケース
今回の住宅も特別な条件があったわけではなく、千葉県の標準的な住宅地での事例です。
だからこそ、「誰にでも起こり得る話」として、広く知っていただきたいのです。
■では、どう対策すればいいのか?■
こうした結露被害を防ぐには、以下のような対策が有効です:
・シンク裏に、結露防止塗料を塗る
・シンク裏面に断熱材(アルミシートやスタイロ材など)を貼る
・キャビネット内部に換気スリットを設ける
・食器などを詰めすぎず、風が通るように配置する
・台所の湿度管理を見直す(換気扇を料理以外でも活用)
また、サーモグラフィーなどを用いた温度チェックを一度行ってみるのも、原因究明には非常に効果的です。
最後に:見えないトラブルにこそ、気づく力を
住宅のトラブルは、想定外の原因で起きることが少なくありません。
水漏れでも、施工不良でもない。水の温度という、見逃しがちな要素が引き金になることもあるのです。
もし、キッチンのカビや湿気が気になる場合は、「水道水の温度」も疑ってみてください。
そして何かおかしいと感じたら、お早めに専門家にご相談を。
私たちは、日々の診断の中で培った経験をもとに、見えない異変にも対応できる体制を整えています。
暮らしの中の小さな気づきを大切に、今日も住まいを守るお手伝いをしてまいります。
 
        店長:牛山 友広
くらしのマーケットアワード(リフォーム部門) 2022金賞/2023銀賞/2024金賞 丁寧に住宅診断いたします
<関東>
茨城県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県