戸田市の株式会社ストック建築事務所のブログ
2024年1月18日
こんにちは!
建築士の牛山です。
よく頂くご質問やお困り事の中に、既にお住まいの建物(主に築10年以上)で、「天井にひび割れが発生していて、建物の構造が心配です・・・」というものがあります。
これまでの経験をもとに、私の考えと対策をお伝えしたいと思います。
天井にひび割れが起きていると、「建物が傾いているのでは?」「大きな地震も無いのになぜ?」と心配になるのは無理もありません。
しかし、天井で起きているひび割れが、建物の構造に悪影響を及ぼしていると思われることや、建物の傾きなどを原因にひび割れが発生していると考えられるケースは、経験上、ほとんどありません。
多くの場合、ひび割れに見えるものは、石こうボードのジョイントに沿って発生したひび割れで、天井の板(石膏ボード)がわずかに振動したり動いたりすることで、表面のクロスが割れてしまっている状態です。
建物は、軽微な地震のほかにも、風や交通振動などにより、常に振動していますので、これを完全に防ぐことは難しいものとなります。
石膏ボードのジョイントに沿って発生したひび割れであることが確認できれば、ほとんどの場合、美観上の問題はあっても、構造上の問題は無いと言えます。
では、なぜ天井にひび割れが発生するのでしょう。対策とともにご紹介します。
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◆天井クロスひび割れの原因① クロスの劣化◆
クロス(壁紙)は、新品に近い状態では柔軟性があり、多少石こうボードに動きがあっても、クロスの柔らかさによって石こうボードの動きにクロスが追従できて、ひび割れに至りません。しかし、クロスが5年、10年、15年と経過するにつれて、クロスは初期の柔軟性を失って固くなります。
その際に、先に述べたような石こうボードの動きが発生すると、ひび割れに繋がることがあります。
■対策 クロスの種類に注意■
クロスの種類は様々ですが、紙クロスや薄手のクロスと比べ、厚手のビニールクロスの方が、ひび割れは起きにくい(硬化しにくい)という印象があります。
そのため、新築時やリフォーム時に選ぶクロスも大切です。特にリフォームの際は、リフォーム向けのクロスを選ぶと良いでしょう。
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◆天井クロスひび割れの原因② 天井石こうボードの施工不良◆
天井の石こうボードは、長方形の形状をしていますが、それぞれの辺同士を並べて貼らずに、互い違いに貼ります。これにより、貼り合わせのラインをずらす事ができます。この貼り方を千鳥貼りと言って業界的には常識とされていますが、時折、目地をそろえて貼ってしまっていることがあります。
この写真は、完成後の建物のため、室内からは石こうボードの貼り方が確認できませんでした。そのため、天井裏から石こうボードの貼り方を確認しましたが、やはり、診断前に予想した通り、千鳥貼りされていないことが確認できました。
また、天井の石こうボードは、150㎜間隔にビス留めをすることが必要とされていますが、これが極端に間隔が広い(ビスの本数が少ない)と、固定不足によりひび割れの原因となります。
■対策 工事中に施工不良を防ぐ■
千鳥貼りにすれば、石膏ボードの動きを散らす事ができるので、クロスが割れにくくなります。また、工事中であれば、ビスの間隔を目視で確認します。石膏ボードの短辺は900mmですので、150mmピッチでビス止めをすると、石こうボードの短辺に7本のビスが打たれていることになります。また、当社では、完成後の建物などで、ひび割れについて診断の依頼があった場合、強力な磁石を用いてビスの頭に磁石をくっつけて、ビスのピッチを確認します。これであれば、クロス施工後でもビスの間隔(ピッチ)を確認することができます。
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なお、これらの施工ミスを防ぐには、工事中チェックが有効です。
工事中チェックは基礎工事や構造や断熱関係での依頼が一般的で、石こうボードの確認は当社でもあまりご依頼頂く機会が多くないのですが、クロスを貼ってしまうと確認できない内容となるので、ご心配な方は、石こうボードが貼られた状態で、かつクロス工事前の状態での診断をご検討ください。
また、既に天井が割れてしまっているという方についてですが、まずは、それが有害なひび割れでないのかということを、確認しましょう。
当社の住宅診断をご活用頂くのが確実な方法ですが、セルフチェックも可能です。
その一つに、これまで説明してきたような、石こうボードのジョイントでひび割れが発生している場合、建物の壁と水平方向または垂直方向にひび割れが発生するということが言えます。
壁と比較して斜め方向や、ランダムなひび割れではなく、建物の壁と同じ向きに発生しているものや、まっすぐ発生しているひび割れは、「石こうボードのジョイントが動いてクロスが割れている」という、構造とは無関係のひび割れであることが多いので、過度に心配されなくて大丈夫です。
また、ひび割れのすぐ近くに小さな磁石を当てて、ひび割れの横1cmくらいのところに、等間隔に磁石がくっつく場合は、そこにビスが存在しているということで、ビスは石こうボードの周辺に打ちますから、ひび割れが石こうボードのジョイントであると言ことがより確実に分かります。
最後に・・
石膏ボードの施工は、工事に関わる関係者であっても、割と軽視されがちですので、これを機にご自宅をご確認してみてはいかがでしょうか。
ご不明なことがあれば、是非ご質問下さい。
それでは、またこちらのブログでお会いしましょう!
店長:牛山 友広
くらしのマーケットアワード2022 金賞 (リフォーム部門) 住宅に精通した一級建築士が丁寧に診断・報告します
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