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「カビ」と聞くと、落ちにくい汚れやアレルギー源など、あまりいいイメージがないかもしれません。カビの働きとカビによる健康リスクについて、真菌の専門家である矢口先生にお聞きしました。
1961年生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。
2023年より千葉大学真菌医学研究センター准教授に就任。生活環境におけるカビの影響、特に病原性カビ(アスペルギルス症原因菌など)にフォーカスし、その性質や健康被害のメカニズム解明に取り組む。
主な研究分野:真菌学、生活環境学、アレルギー疾患、病原菌制御。
カビの役割とは?

ー「カビ」というと、病原体になるなどあまりポジティブなイメージがありませんが、そもそもどういった役割を果たしているのでしょうか?
矢口先生:
カビは真菌(酵母、微生物、きのこなどの生物群)ともいいます。これらは自然界において「分解」という役割を担っています。
例えばこうじ菌は、みそやしょうゆなど発酵食品の製造に欠かせない存在ですし、医薬品のペニシリンも青カビからできています。
ー江戸時代にタイムスリップする医療ドラマでも、主人公がカビからペニシリンを作るシーンがありましたね。
矢口先生:
さらには掃除に使われるクエン酸も有機酸という菌から作られています。真菌の「分解する」特性を活かして、さまざまなところで有効利用されています。
ーあまりポジティブなイメージがなかったカビですが、知らないところで実は私たちの生活に欠かせない存在なのですね。
家の中でカビが繁殖する原因とは?

ー家の中ではいつも同じような場所にカビが発生するような気がするのですが、具体的にカビが生える原因はなんでしょうか?
矢口先生:
カビの生育には、以下の3つの条件が必要です。
- 温度:20~30℃
- 湿度:60%以上
- 有機物(カビの栄養源)
有機物には食材や木材、紙、綿、髪の毛、ホコリ、石けんカスなど、生物由来の物質が含まれます。
家の中はこれらの条件がそろいやすいため、カビが繁殖しやすい環境と言えるでしょう。
ー特に注意すべき家の中のカビが生えやすいスポットはありますか?
矢口先生:カビは湿度が高く、風通しが悪い場所、さらにホコリや髪の毛、有機物が多い環境で繁殖しやすいです。以下の場所には特に注意が必要です。
- 水回り:浴室、洗濯機、シンク、トイレ、排水口
- 家具や生活空間:エアコン内部、掃除機の中、布団、押入れ・クローゼット、テレビ周辺、家具の裏、部屋の隅
- 冬場特有の場所:結露した窓、カーテン
挙げればキリがありませんが、特に湿気の多い場所を重点的に対策することをおすすめします。
カビによる健康リスクとは?

ーカビが原因で起こる健康リスクとは、どのようなものがあるのでしょうか?
矢口先生:
鼻水、皮膚炎などのアレルギー症状のほか、咳が出るような呼吸器系の疾患が多いです。
カビが原因になる呼吸器系疾患にはさまざまなものがあります。
代表されるのは、過敏性(かびんせい)肺炎、好酸球性(こうさんきゅうせい)肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などです。
特に「過敏性肺炎」は、家庭内に存在するカビを繰り返し吸い込むことで発症します。
この疾患は、肺の中の気道や肺胞が炎症を起こし、乾いた咳や息切れ、発熱などの症状を引き起こします。長期にわたってカビを吸い続けると、肺が次第に固くなることもあります。原因となるカビを取り除けば症状は改善します。
お子さんに多い気管支ぜんそくは、発症にさまざまな原因があるので一つに特定することは難しいですが、カビも悪化する原因の中のひとつです。
ただし、人によって免疫力や体力などが異なるため、同じ量のカビを吸っても罹患(りかん)する人としない人がおり、すべての人に症状が出るとは限りません。
ー人によって異なるとのことですが、リスクが高いのはどのような方でしょうか?
矢口先生:
免疫力が低下している方が特に注意が必要です。具体的には以下のような人々です。
- 小さいお子さん
- ご高齢の方
- カビに対するアレルギーを持つ方
- 臓器移植を受けた方
こういった方はカビが生えにくい環境を整える事が大事です。カビをゼロにするのは難しいですが、「生えにくい環境」にすることは可能です。
家の中のカビ対策
ー家の中でカビが生えにくい環境を作るには、どのような対策が有効でしょうか?
矢口先生:
ポイントは、カビが生える3つの条件を「揃えないこと」です。具体的な対策としては以下があります。
温度を20〜30℃以外にするのは快適性に欠けてしまいますが、湿度を下げることと有機物を排除することは可能ですよね。
✔ 湿度を下げる
- 定期的に換気を行う
- 家全体の風通しをよくする
- 水回りの水気を拭き取る
- 除湿機を活用する
✔ 湿度を下げる
- ホコリ・髪の毛・食べカスをこまめに掃除する
- 石けんカスを取り除く
ー見えない場所、例えばエアコン内部への対策も必要ですね。
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矢口先生:
その通りです。一般的に、エアコンを10分つけると1,000個ぐらいのカビの胞子が吹き出すといわれています。こまめなフィルター掃除や、エアコンの内部クリーニングはカビの発生を抑えるのに効果的です。
梅雨の時期のカビ対策
ー湿度が高い梅雨の時期は、どのような対策が効果的ですか?
矢口先生:
梅雨の時期も基本は「換気」と「除湿」です。ただし、雨の日は窓を開けるのが難しいため、次の方法を取り入れると良いでしょう。
- 除湿機やエアコンの除湿・送風機能を使う
- サーキュレーターで室内の空気を循環させる
これらを実践することで、湿度を抑え、カビの発生を予防することができます。
ーやはり「換気」と「掃除」がカビ対策の基本なのですね。本日はありがとうございました。
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